たからもの:004


 【 切 2 】
 ピロ 様


―ZORO―

ひとつだけわかった事がある

あいつは一人の腕に抱えられるような奴じゃないって事だ

気持ちの上ではわからないが

すべてを独占しようとすると辛くなる

だから…







あの日以来

ゾロが視線で俺を追ってくる事が少なくなった

変な言いがかりを吹っかけてくる事も

何かを言おうとしたのを遮ったのが悪かったのか…

今日あたり話を聞かないと埒があかないかもしれない





相変わらず筋トレしているゾロに呼びかける

「今日、一緒に飲まねえか?」

「おう!」

顔を向ける事無く返事だけ

やっぱり、おかしい…







みんながそれぞれの場所に引き上げた後

もう一度ゾロだけが戻ってきて所定の位置に腰掛けた

「飲むだろ?」

グラスを2つ持って側に座り、甘える仕草で寄り掛かってみる

そんな俺に無造作に唇が振ってくる

手は下肢を撫で上げた俺を煽りにかかる

「おっと、酒を飲むんだっけ?」

離れた唇は酒を含み、もう一度戻ってきた

流しこまれる酒はストレートでとても飲みきれるもんじゃない

口から零れ出るそれを

「勿体ねえな」

ゾロの舌が掬い上げた

その間も手は止まる事無く俺を追い詰める動きをしている

突然、俺の前に跪(ひざまづ)くと

散々手で煽ったモノを口に含む

「何、がっついてんだよ」

思わず文句が口を突いて出る

俺は話がしたかったんだ

怒鳴っておいて、あいつの真剣な目にぶつかった

「欲しい時には貰えない、なら、くれる時に奪って何が悪い」

それだけ言うと殊更(ことさら)強く吸い上げる

本当にそこから全てを奪いたいというように



テーブルに手を着いて立つように追いたてられた

酒に浸した指は俺の中にも埋め込まれ

妙な感覚が体を覆う

「欲しいって言ってみな?」

いつもはこいつの方が耐えられなくなるから

こんな事言えなんて言われた事はない

「お前、俺が欲しいわけじゃないんだな…」

沈黙をどう取ったのか体を引こうとする

とうに引くに引けない状態なのに…

やっとの思いで一言だけ絞り出す

「欲しい・・・」

何を何処になんてとても言えない

それは分かっていたのか指が抜かれゾロが入り込んでくる

「欲しがられるのは嬉しいもんだな」

嬉しいというのは本心だろう

それは奴が刻む律動にも感じられた

ただ…

胸の飾りをいじる事はあっても前はほったらかし

堪らなくなって自分の手を伸ばして抑え込まれる

「そこは俺専用じゃないからな、今日はお預けだ」

専用じゃない?

何考えてんだ?

わけのわからない俺に

「俺だけを感じて貰う、ここだけでイケ」

あ~、もういい、好きにしてくれ

話を聞くのは後回しだ、取り敢えず悦を追うのに集中した







次の日、俺の体は昨日の余韻を残したままだった

ゾロはというとここ数日となんら変化は見られない

みんなにバレないようにする為には当然なんだが

なんだか理不尽な気さえする

あいつはこんな気持ちの事をいっていたのか?

やっぱりちゃんと話をするべきだった

それでも少しわかった事がある

『欲しい時には貰えない』

俺が応えられてないって事

『そこは俺専用じゃない』

どうやら女を疑っているらしいって事

で、どうすりゃいいんだ

こんな風に無い物のように振る舞われ

「欲しいんだったらてめえが言え」

なんて状態はごめんだ

照れる言い方だがちっとも幸せじゃない

俺の方を見ないゾロの背中を見ながら途方に暮れた







考えていてもしょうがない、俺はゾロを呼び出した

「なんか用か?」

後でちょっと来いと呼び付けたので

色っぽい用事ではないと思ったのだろう

何もせずに椅子に座る

ゾロに俺の気持ちをわからせなきゃならない

俺はシャツを脱いで素肌を晒し

ズボンのジッパーを下げてゾロの前に立つ

「全部お前専用だ、好きにしてくれ」

しばらく呆然としていたが

「嬉しいが、どういう風の吹き回しだ?」

ちきしょう、言わなきゃ通じねえのか

出来ればいいたくなかったのに…

「お前が騒いでくれないと惚れられてる気がしねえ

俺が俺でいられない、余裕でいさせてくれよ」

そこまで言っても怪訝な顔をしている

「ほったらかしにするな、俺に執着してろ!」

こいつの鈍さが憎らしく つい言葉を荒げてしまう

それを聞き

息をひとつ吐くと、椅子にふんぞり返り

「振り回されてるのはお互いさまってか?」

そう言ってニィーっと笑った

「来いよ」

俺に向かって両腕が広げられる

「今日は俺が先にイッても勘弁な」

小さな笑い声と一緒に聞こえた

「仕方ねえな、この俺に迫られたんだから」

やっぱり、笑い声で返した







―ZORO―

俺だけが好きなのかと思っていた

そう思わせたのはサンジの態度だ

『くれる時に奪えるだけ奪う』

そうするしかないと思っていた

だが、よく考えてみればそれはサンジらしい振る舞いだった

そうしていられる状況を俺が作る

今は、そうだな

『サンジがサンジでいられるように、俺は俺でいよう』





そして、いつも通りの明日が来る



END



リンク第三号記念として(!)頂いてしまいました、ゾロサンのSSですっ
ご丁寧にも、聖のわがままなリクエストを聞いてくださったのです。
そのリクエストと言うのが・・・・

我が道を行くイケイケゾロに翻弄されるサンジさん
勿論、サンジさんへの愛でイケイケ。
我が道を行く、なので、サンちゃんを構いたい時と
その気がない時の差が激しいとか(鬼)
ゾロを思いっきりワガママにしちゃってオッケイ!
あぁん、もう、艶っぽいヤツでお願いしますっ


・・・今見ても、なんてリクエストのしかただ、自分ッ!
そんな気持ちでいっぱいです(爆)

でもでも、ゾロったらサンジを翻弄してくれていますよ!
しかも、サンちゃんの誘い受けってのがもう、ツボでツボで!!
もう、ほんっと、ピロ様のゾロとサンちゃんは絶品ですv
聖、大感激なのであります。

このお話は、題名が『切2』です。
ってことは、1が当然あるわけで。
・・・・合わせて読むとまた素晴らしいんですよっ
興味を持たれたら、是非飛んでってくださいましv

ありがとうございます、ピロリンさんゥ




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